大阪医科大学 労働契約法20条裁判

大阪地裁の裁判期日、意見陳述


第13回 : 2018年1月24日(水)  大阪地方裁判所809号法廷

 

・判決 13:10~ 

・判決報告集会 13:30~大阪弁護士会館902号室


第12回期日 : 2017年9月14日(木)

 

・最終書面のやりとり

・結審

・原告代理人(谷 主任弁護士)から最終意見陳述書の読み上げ

1 約4年半前,初めて民事的効力のある法律の規定として,有期労働者と無期労働者との間の不合理な労働条件の差別を禁止する労働契約法20条が施行されました。この労契法20条ができたことで,有期労働者が不合理な労働条件の格差を是正する裁判に立ち上がり,いま全国各地で争われています。本件もそのうちの一つです。

2 その数ある事件の中でも本件の最大の特徴は,有期労働者である原告と労働条件の相違を比較する明確な比較対象が存在するところにあります。それは基礎系教室の秘書という原告と同じ職務に従事している正職員です。8つ同種の教室があり,そこに正職員とアルバイト秘書が同じ秘書職務を行っているわけですから,これほど明確なものはありません。大学側は,事務系職員全体で比較すべきといいますが,基礎系教室の秘書と他の事務系職員とで職務内容が異なることに争いはありません。隣りに同じ職務内容の労働者がいるのに,別の部署の異なる職務に従事する労働者と比較してみても無意味ですし,職務内容等を判断要素として不合理な労働条件の格差を禁止する労契法20条の趣旨からも被告主張の誤りは明らかです。大学側は将来の配転の可能性を述べますが,それは不合理性の考慮要素の一つであって比較対象の問題ではありません。比較対象としてはあくまで請求対象期間に同じまたは類似の職務内容に従事していた労働者同士で比較するのが労契法20条の解釈として妥当です。

この点については,近時「働き方改革」を議論する労政審が出した建議においても,「待遇差の比較対象となる正規雇用労働者については」,「非正規雇用労働者と同一の事業所に職務内容が同一又は類似の無期雇用フルタイム労働者が存在する場合にはそれと比較することが適当と考えられる」と明らかにしているところでもあります。

3 もうひとつの本件の大きな特徴は,格差の不合理性が明白な点です。

アルバイト秘書と正職員秘書とで,労働日・労働時間は全く同じですし,業務内容や業務内容に伴う責任の程度についてはそもそも大学側自身が同じであることを裁判の中で認めておられました。実際にも,先ほど述べたように職務内容は同じですし,配置の変更の範囲についても,アルバイト職員も正職員も異動を命じられる規定がある点で同じ,実際の異動の頻度も本件の審理で明らかになったように,アルバイト秘書も正職員秘書も同じようなものです。そして格差を合理化するその他の事情は見当たりません。

にもかかわらず,・・さん(原告)のようなアルバイト秘書と正職員秘書では,賃金・休暇をはじめとする労働条件に大きな格差があります。その中には,例えば夏期特別有給休暇など,そもそも期間の定めの有無とは全く趣旨の異なる労働条件もあります。また,例えば賞与については,大阪医科大では個々の労働者ごとに査定等はなされず一定額が一律に支給されており,さらに同じ有期である契約職員にすら一律支給されています。有期無期にかかわらず一律支給されている賞与について,同じように働くアルバイト職員のみ排除し,年収に大きな差を付けることが不合理であることは明らかです。

4 以上のように,本件は労契法20条違反が認められる典型的事案です。本件で労契法20条が否定されれば,これが認められる事案はない,労契法20条ができた意味は無かった,ということになりかねないと思っています。

 

不安定かつ不合理な格差のある労働条件の下で働く多くの非正規労働者が大阪地裁の裁判官が裁く本件の判決に注目しています。本件事案の特徴をよく理解いただき,労契法20条が制定された立法趣旨に立ち返った適切な解釈・判断を示していただくことを期待します。

 

 


第11回期日 : 2017年6月14日(水)

 

・証人尋問


第10回期日 : 2017年2月28日(火)

 

・準備書面のやりとり

・和解の話し合い、決裂。

・非公開


第9回期日 : 2016年12月26日(月)

 

・準備書面のやりとり

・裁判所から和解の提案

・非公開


第8回期日 : 2016年10月24日(月)

 

・準備書面のやりとり


第7回期日 : 2016年9月5日(月)

 

・準備書面のやりとり


第6回期日 : 2016年6月23日(水)

 

・準備書面のやりとり


第5回期日 : 2016年5月11日(水)

 

・準備書面のやりとり


第4回期日 : 2016年3月16日(水)

 

・準備書面のやりとり


第3回期日 : 2016年1月28日(木)

 

・準備書面のやりとり


第2回期日 : 2015年11月27日(金)

 

・準備書面のやりとり

・原告の意見陳述の内容

私は結婚後20年近く専業主婦でしたが、下の子が中学に入学したことを契機に、地域や学校の役員などボランティアに関わった経験を生かして仕事をすることを考え、一昨年(2013年)の1月、大阪医科大学に就職しました。それから今年(2015)3月に適応障害で休職するまで2年数か月、有期雇用のアルバイト職員として、同大学の⚪︎⚪︎教室の教授秘書・教室秘書の仕事をしてきました。

大学には「基礎系の教室」は合計8教室あり、各教室に一~二人、私のような秘書が配属されています。正職員もいれば、私のような有期雇用のアルバイト職員もいます。秘書は皆、教授秘書や教室秘書として、研究費やお茶代の管理、教員や様々な身分からなる教室構成員のお世話、講義や試験の準備、電話や来客対応、教室内の掃除やゴミ出しなど事務や庶務・雑用の全般を行っており、正職員・アルバイトに関係なく仕事の内容は一緒です。仕事の日数や時間も、私は平日5日間と土曜日半日出勤のあるフルタイムであり、これも正職員と全く一緒でした。大学側は、秘書を正職員から有期雇用の職員に置き換えていっていると主張しているようですが、それこそ、両者の仕事内容が同じであることを認めていると思います。

私のいた⚪︎⚪︎教室は、私一人でお世話しなければならない教員や学生等の数が、はじめは15名だったのがどんどんと増え、最終的には30名以上まで増えました。一方で、隣の教室の正職員は一人でたった数名のお世話をするだけでした。私は、正職員や複数の秘書が配置されている他の基礎系教室の秘書よりも格段に仕事が忙しく、特に様々な手続きが重なる月初は、毎日目が回りそうでした。私は教授や大学に、何度も、他の教室のようにもう一人秘書を増やして欲しいとお願いしました。労基署から助言もしてもらいましたが、ずっと放置され続けました。

仕事の中身は全く同じで、日数や時間も同じ、しかし仕事量は私の方が他の教室に配置されている正職員よりも2倍は多いのに、給与は2分の1から3分の1なのです。理不尽な思いを抱えながらも一生懸命、教員や学生に尽くし、身を粉にして働いてきました。しかし仕事はどんどん増え忙しくなるばかりで、アルバイト職員は大学からの評価は全くなく、増員も果たされず、結局、私は今年3月、適応障害と診断されるまで追い込まれ、仕事を休職せざるをえませんでした。

そして、ここでも正職員との差別は続きました。大学からは、休職中も一定の補償が受けられる正職員の休職制度は、有期雇用の職員である私には適用されないと言われました。また、無給であることを理由に、私学共済からも強制的に脱退となりました。さんざん安いコストで好き放題使われ、身体や心が壊れたらポイ捨てとされました。物同然の扱いだと思います。

一昨年(2013年)、非正規雇用労働者の待遇が改善される法律ができたという報道を見ました。私は、これで私たち非正規労働者の待遇も少しは改善されると大いに期待しました。しかし、大学はそのような法律などなかったかのように、何の待遇改善もなされませんでした。そして、あまりの仕事の大変さに身体をこわした私は使い捨てです。

私は自分が裁判なんて大それたことをするなんて思ってもみませんでした。しかし、全国で同種の裁判を闘っている非正規労働者がいると聞き、誰も声をあげる人がいなければいくら正しい法律があっても社会は変わらない、大学も変わらないと励まされ、家族の理解も得て、裁判に立ち上がりました。私にとっては、大きな、大きな決意が必要でした。

裁判官におかれましては、ぜひとも私たち非正規労働者が過酷な労働条件で働いている実態、不当な扱いを受けても簡単には立ち上がることができない実態を真っ直ぐに見ていただきたい。私を含め、非正規労働者が本当に苦しい中にあり困っています。非正規労働者の格差是正を目的とした法律を実現する判決をしていただきますよう、心からお願い申し上げます。


第1回期日 : 2015年10月15日(木)

 

被告の大阪医科大学が欠席のため、意見陳述は次回の第2回に行うことになりました。


提訴 : 2015年8月24日(月)

 

正職員と格差 時給制職員、医大提訴へ

朝日新聞(2015年8月21日)

 

 正職員と変わらない仕事をしても待遇に差があるのは、雇用期間の定めの有無で差別することを禁じた労働契約法20条に違反するとして、大阪医科大(高槻市)のアルバイト職員の40代女性が大学に給与の差額など約450万円の支払いを求め、来週にも大阪地裁に提訴する。

 

 訴えによると、女性は2013年1月から最長1年の雇用契約を更新しながら時給制で勤務。研究室の秘書として事務や経理を担当したが、体調を崩して今年3月に適応障害と診断されて欠勤している。だが、欠勤中の給与や賞与・退職金は正職員のようには支給されず、給与水準も低いと主張。これらの待遇格差は労契法が禁じる「不合理な差別」にあたると訴える。

 女性は「つぶれるまで働いて使い捨てでは納得できない。大学に残る他のアルバイト職員の待遇改善にもつなげたい」と話す。大学の代理人弁護士は「訴状の内容を見て主張の具体的根拠を把握した上で、訴訟の中で適切な主張立証を尽くしていく」としている。

 


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